酒飲みに共通して見られる病気の1つに、脂肪肝があります。この脂肪肝の予防や改善に、重要な役割を果たしてくれる物質があります。
レシチンです。脂肪肝は、文字どおり脂肪(トリグリセリド=中性脂肪)が肝細胞に異常にたまる病気です。健康な人の場合、一般に肝臓には5%ほどの脂肪が含まれており、そのうち70~75%はリン脂質という脂肪で占められています。
残りの25~30% が、コレステロールやトリグリセリドなどで、それぞれ肝臓の組織を形づくったり、機能を保つのに役立っています。ところが、脂肪肝になると肝細胞にトリグリセリドだけが異常にふえて、肝臓全体に占めるトリグリセリドの割合をグッと上昇させます(10% 以上)。
肝細胞にたまったトリグリセリドが小脂肪滴、中脂肪滴といわれる比較的小さな脂肪の粒であるうちはまだよいのですが、大脂肪滴や脂肪嚢といわれる大きな脂肪のかたまりがあらわれると問題です。トリグリセリドが肝細胞の大半を占めて細胞の核がすみにギュッと押し込められてしまうと同時に、細胞の中で重要な働きをしている小器官に障害が生じてくるからです。
さて、先ほどふれたように、健康な肝臓には一定の脂肪が含まれ、その大半をリン脂質が占めています。実は、このリン脂質の主成分がレシチンなのです。肝臓と脳の働きを良くするレシチン
脂肪肝になると、肝臓ではトリグリセリドが増加し、逆にレシチンは減少します。リン脂質やレシチンは、細胞膜や細胞の中にある小器官の膜を構成する重要な成分です。つまり、細胞が正常な形を維持していくのにも、レシチンがたいせつな役割を果たしているのです。
さらに、リン脂質やレシチンは、たとえば小器官の1つであるミトコンドリアの働きを盛んにする役割を果たしています。ミトコンドリアは、いわば脂肪を燃やす工場で、エネルギーを生み出しています。こうしたことから、脂肪肝を起こして大量のトリグリセリドのために瀕死の状態にある肝細胞の活力を回復させてやるには、十分なレシチンが必要なのです。レシチンの働きにとって重要な要素は、その構成内容にあります。レシチンをはじめとするリン脂質は、たいていリノール酸やリノレン酸、アラキドン酸といった不飽和脂肪酸を多く含んでいます。不飽和脂肪酸は植物性脂肪に多く含まれる脂肪で、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸より燃えやすい性質があるのです。そのため、レシチンが十分にあると、トリグリセリドが蓄積されにくく、また蓄積されたトリグリセリドがとり除かれやすくなります。
もちろん脂肪肝予防の最上の対策は節酒または禁酒にありますが、それとともにレシチンを多く含む食品を補給してやることが肝臓を守るうえでいかに重要であるかおわかりいただけたと思います。レシチンは大豆や大豆製品、卵黄などに多く含まれます。