低血糖症のチェックリスト
うつと低血糖症の症状はとてもよく似ています。チェックリストを使ってまず、低血糖症でないことしっかりを確認しましょう。
うつ病でこんな症状があったら栄養欠損の可能性大
- 甘い物、スナック菓子、清涼飲料水を毎日摂る
- 空腹感を感じおやつを食べることが多い
- 夜中に目が覚めて、何か食べることがある
- 夕方に強い眠気を感じたり、集中力がとぎれる
- 体重の増減が激しい
- 体重が増えてきた、また痩せにくくなっている
- イライラや不感が甘いものを摂ることで治まることがある
- 頭痛、動悸、しびれなどが甘いものでよくなったことがある
- 安定剤や抗うつ剤を服用していても明かな症状の改善がない
- 血縁者に糖尿病の人がいる
うつ病と誤診されやすい低血糖症
低血糖症のチェックリスト10項目のうち3項目以上にチェックがついた人は、低血糖症の危険性が高いです。
じつはこの低血糖症こそ、一番うつに間違えられやすい栄養のトラブルです。
突然イライラする、漠然とした不安感に苛まれることがある、集中力が減退している、夜中に目が覚めることが多い… など、さまざまな不調を感じて精神科を受診すれば、おそらく、「うつ」、あるいは「不安障害」といった診断がくだされるでしょう。
人前に出ると極度に緊張してしまう「社会不安障害」 | 健康マニア
https://www.h-mania.info/2015/01/28/%e4%ba%ba%e5%89%8d%e3%81%ab%e5%87%ba%e3%82%8b%e3%81%a8%e6%a5%b5%e5%ba%a6%e3%81%ab%e7%b7%8a%e5%bc%b5%e3%81%97%e3%81%a6%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%86%e3%80%8c%e7%a4%be%e4%bc%9a%e4%b8%8d%e5%ae%89%e9%9a%9c/
最近は、うつ病などの診断は、かなりマニュアル化されています。そのマニュアルにない症状を訴えたとしても、それはチェック項目には入ってこないのです。
たとえば、7 の項目の、イライラや不安感があるとします。そのあとに、「甘い物を摂ると、気分が落ち着くんですけど… 」と状態を説明したとしても、「甘い物〜」以降の言葉は、うつ症状とは関係ないとして診断に加えられることはないのです。
だから多くのケースで、うつと診断されてしまうのです。ところが、じつは甘い物への渇望は、あきらかに低血糖症の状態を示しているのです。
1 の甘い物、スナック菓子、清涼飲料水などをほぼ毎日摂取している、という箇所にチェックか入った人も、そうした食習慣が低血糖症を引き起こしている可能性はかぎりなく高くなります。
食事のあいだに空腹感を感じてなにかを食べるというのも低血糖症の症状で、夜中に目覚めるというのはうつの症状でもあるのですが、なにかを食べてしまうというのは、低血糖症状の証です。体重の増減があったり、太り始めて、痩せにくくなるというのも同様です。
うつと低血糖症の症状には、似た部分が多いのである。気分に変調があらわれるようになったら、低血糖症が関係しているのではないかと、疑うべきでしょう。
糖尿病と低血糖症は表裏一体の関係
低血糖症は、その名が示すとおり、血糖値が深くかかわっています。これがなぜうつのような精神症状をもたらすのか、疑問に思う人もいるかもしれません。
脳のエネルギー源として、とても重要な働きをしているのがブドウ糖です。ブドウ糖は肝臓で分解されてエネルギーとして使える状態になったあと、その多くは血液中に溶け込み、身体の各器官へ届けられ、脳へと送られます。血液中に溶け込んだブドウ糖の濃度を示すのが「血糖値」です。
血糖値は通常、ホルモンによって一定の範囲に調整され、維持されています。一定の範囲から上、つまり、濃度が高くなるとすい臓からインスリンが分泌され、濃度を薄めて血糖値を下げるように働きます。逆に、濃度が低くなると、血糖値を上げるためにアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどといったホルモンが作用し、あらたにブドウ糖が補給される仕組みになっています。
血糖値が安定して、脳に充分なブドウ糖が供給されていると、精神状態はとても安定したものになります。やる気があり、集中力も満々、楽しい、気持ちいいといったプラス感情が自然に湧いてくる状態です。
この心の状態を維持するには、血糖値を安定した状態に保つということがなによりも重要です。食事をしたあと、血糖値がゆるやかに上がって、その後ゆるやかに下がり、3~4時間後には空腹時とだいたい同じ値になって、空腹時のレベルから下がりすぎないことが前提です。そして、ゆるやかに血糖値が上がって下がるカーブと、インスリンの分泌豪の推移が並行になっていることが基本です。
血糖値がゆるやかなカーブを描ぐようにするには、インスリンの分泌が少なくてすむような食習慣が大事ということです。
糖質の量を減らし、白米より玄米、食パンより全粒粉のパンを食べるなど、GI値の低い食品を摂ることが、血糖値をコントロールする最適な手段になります。
低GI値の食材の選び方 | 低インシュリン ダイエット
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生活習慣病の代表として定着してしまった糖尿病は、血糖値が高くなってしまう病気です。血糖値を下げる働きをするインスリンが効かなくなる、あるいは効きづらくなって血糖値を上げているのです。つまり、インスリンを多量に放出する必要がある状態です。
インスリンには脂肪を合成する作用があるため、インスリンの量が増えれば増えるだけ太りやすくなるのです。「最近太りやすくなった」と感じて検査を受けたら糖尿病が見つかったという人はじつは多く、症状のないまま進行していく病気が、糖尿病です。
「血糖値が高くなって起こるのが糖尿病なら、低血糖症とは、血糖値が低くなって起こると考えていいのでしょうか? 」
血糖値を調整する能力が落ちているという観点から見れば、糖尿病も低血糖症も、表裏一体の関係にあるとはいえます。
ただし、低血糖症というのは、血糖値が低くなることだけが問題になるのではありません。上がったり下がったりを繰り返したり、低い値で推移していくという状態もあります。インスンリンの分泌が正常なかたちから著しく逸脱する人もいるなど、人によってあらわれ方はさまざまですが、1日を通して、安定した血糖値を維持することが困難になることによって、身体や心に起こってくるさまざまな症状が、問題になる病気です。
血糖値の安定が維持できないと、当然、脳に送られるブドウ糖も安定しません。脳にとっては一大事です。そこで、血糖値が上がればインスリンが放出されるように、血糖値が下がりすぎれば、それに対応してさまざまなホルモンが働きます。血糖値を下げるホルモンはインスリン1種類しかないのですが、上げるホルモンは多数存在していて、それらがさかんに働き出します。
たとえば、食事をしてしばらく時間が経過して、血糖値が下がってきている状態のときに、インスリンが大量に出てしまうというケースもあります。すると、血糖値を上げるように働くホルモンが放出されるわけですが、大量に出てしまうと今度は自律神経に乱れが生じ、心と身体にさまざまな症状が出てくるようになります。
どういったホルモンが優位に出てくるかで、あらわれる症状は異なりますが、集中力がなくなったり、イライラや不安感が増したり、人によっては眠気をもよおしたり、手のしびれやど、動悸、頭痛を感じたり、筋肉がこわばったりなど、まさにうつと診断される症状が起こってくるのです。これが低血糖症です。
ところが、低血糖症に関する知識はほとんどありません。よく、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んだり、インスリン注射をしている人がその対応を誤ったときに、急激に血糖値が下がることを「低血糖」といいますが、特殊な病気を除いては、こうした状況が引き起こされないかぎり、低血糖症は起きないと考えられています。
いまほど食事の改善の必要性が叫ばれ、生活習慣病として糖尿病が問題視されているなかにあって、血糖調整異常として表裏一体の関係にある低血糖症がクローズアップされないのは、こうした認識が長く続いてきたからにほかならないでしょう。
なお、低血糖症には、典型的なパターンが3つあります。3つのパターンの特徴はこうです。
1.反応性低血糖症
「反応性低血糖症」というのは、食事を摂ったときに、急激に血糖値が上がり、ピークを迎えると今度は急激に下がっていくのが特徴です。急激に上がったあとは、3~4 時間経って次に空腹感を感じる前に、空腹時の値より80% 未満ほどの値で、血糖値が下がっています。
空腹時の血糖値は、上がる前と下がった時点で同一ラインにあるのが正常の血糖値のあり方ですが、このタイプは、下がったときの値が空腹時を下回っている状態です。
こういうカーブを描く場合は、じつに多彩な精神状態と身体の変調があらわれるのが特徴です。血糖値が急激に下がると、飢餓状態に備えるためにたくさんのホルモンが放出されますが、どのホルモンが作用するかでさまざまな症状が出ます。
たとえば、アドレナリン、ノルアドレナリンが急激に放出された場合は、動悸、手足のしびれ、筋肉のこわばり、あるいは頭痛といった症状があらわれます。精神的にはイライラしたり、不安感が募ったり、恐怖心にかられます。その人の性格にもよるのですが、なかには凶暴性が増すといった症状をあらわす人もいます。
糖値が下がりすぎてしまうと、今度は脳にいくエネルギーそのものが減少するため、集中力の低下、強い眠気、うつっぽい症状があらわれます。このタイプでさらに問題なのは、インスリンが遅れて出てしまい、しかも量が多いことです。
インスリンの放出が多い場合は、ため込む作用が働いて、太ります。食事の量が増えていないのに太ってきたといったときは、この反応性低血糖症の傾向が疑われます。
2.無反応性低血糖症
食事をしても血糖値の充分な上昇がないタイプを「無反応性低血糖症」といいます。10代~30代前半の人に多く見られるパターンで、脳や筋肉など、身体にエネルギーを供給する時間帯がつくれないのが特徴です。インスリンは出たり入ったりしています。インスリンは血糖値を下げる働きをしているから、血糖値がなかなか上昇していかないのです。
こういう血糖値のカーブを描く人は、とにかく疲労感がひどく、身体が常にだるく倦怠感が強いのが特徴です。朝起きられずに、学校へ行けない、仕事へ行けないといったことが起こります。脳へのエネルギーが絶対的に不足しているため、思考力が低下しているし、このパターンは間違いなく抑うつの症状を訴えます。
一時期「慢性疲労症候群」として、厚生労働省が調査したことがありました。うつの症状のひとつではないか、ビタミンC が欠乏しているのではないかなどといった意見も出されたのですが、残念ながら、慢性疲労の原因に低血糖症が取り上げられることはありませんでした。結局、結論は出ないままに終わってしまいました。
3.乱高下型低血糖症
「乱高下型低血糖症」は、血糖値が上がったり下がったりを繰り返すタイプです。気分の変化もまさにその通りで、さっきまで調子がよくてニコニコ朗らかだったのに、次の瞬間は、いきなり顔つきが険しく変わったりします。急にめそめそ泣き出したかと思うと、笑い出したりします。感情が一定しないのが特徴です。
その気分の変化と、血糖値のカーブがみごとに合致しているため、検査結果を告げると、多くの人は気持ちが軽くなります。メンタルな問題だと思っていたのが、原因がわかり、治療の方向も見えてきます。そのことに安心するのです。
また、血糖値の乱高下を繰り返す場合は、常に血糖値の急激な下降に対応すべく、交感神経は緊張状態を続けていなければなりません。交感神経を司るホルモンが多く分泌されていて、脳内にはノルアドレナリンが高い億で示されることが多くなります。
ちなみに、いずれの低血糖症のタイプも一般的に認められた正式名称ではなく、実際にはこれらのタイプの特徴をあわせ持つ人も少なくありません。
重度のうつがじつは低血糖症だった
あきらかに低血糖症と思われる症状を訴えていた、男性(22歳)の例です。彼は、病院で診断されたのはいた重症の「うつ病」でしたがが、検査の結果からは、低血糖症によるうつ症状の発現が見てとれました。
彼は、中学生時代からいじめに苦しんでいましたが、高校に入学した16歳ごろから、さまざまな症状を訴えるようになっていました。
落ち着きがなくなり、音にひじょうに敏感でした。18歳のころからは、テレビやラジオの音や音楽がわずらわしいという感覚が起こるようになりました。そのころから、意欲が低下し学校を休みがちになりましたた。
精神科を受診したのは19歳のときでした。くだされた病名が「反応性うつ病」だったというわけです。このときから投薬が開始されました。最終的に処方された薬は7種類、1日に24錠を服用するようになりました。薬を飲むようになってからも身体はだるく、吹き出物が出始め、口内炎もできるようになりました。
21歳のときには、1年間で20 kgも太ってしまったことで、自分の判断で薬の服用をやめる決意をしました。皮膚のトラブルもひどく悩んでいました。薬を中止して半年ほど経ったころから、うつや不安症状が再燃したため、再び精神科を受診し、投薬が再開されました。
このときは、血液の状態は、たんばく質、コレステロールの値がひじょうぅに低く、総合的な栄養不良の状態でした。たんばく質の代謝もうまくおこなわれていないという結果でした。食事内容を聞くと、さもありなんでした。
太ってきたために、ほとんど肉類は口にしていませんでした。ご飯やパンなどの炭水化物はよく食べ、お腹がすくとスナック菓子をお腹いっぱいになるまで食べていました。ペットボトル入りのミルクティや清涼飲料水などをよく飲み、夜中に空腹で目が覚めることがあり、どうしようもなく食べてしまうという食習慣でした。5時間の糖負荷検査をおこなったところ、「乱高下型低血糖症」であることがわかりました。
このパターンは血糖を調節するために多くのホルモンや酵素が用いられて、自律神経のバランスが不安定になります。うつ症状のほかにイライラや焦燥感、強い不安感や恐怖感、頭痛や動惇、手足のしびれなどの身体的な症状も出ます。血糖値が急激に低下した3~4時間後には、強い不安感を訴えていました。
治療方針はまず、血糖値を急激に上げる食材を避けるようにします。清涼飲料水、スナック菓子、甘い物、砂糖、白米、ラーメン、白いパンなど、GI値の高い食材を避けるようにしました。
食事の回数は一日に3~5回、1回の量を少なくして回数を多くし、たんばく質の摂取を十分におこなうように変えました。ライフスタイルは、ほとんどひきこもり状態だったため、食事のあとは散歩に出かけるようにしました。
こうした食習慣を基本に、不足している栄養素( ナイアシン、ビタミンC 、ビタミンB群、プロテイン)を併用し、7ヶ月後の自覚症状は、以下のようなものに改善しました。
- 不安や焦燥感は、まったくなくなった。
- 毎朝決まった時間に起きることができるようになった。
- 皮膚の状態がとてもよい。
- 体重が8kg減って、身体が軽い。
- いろいろなことをやりたいという意欲が芽生えてきて、医療事務の専門学校に通い始めた。
- 精神科から処方された薬は1種類だけのみ飲み続けている。自分でいらないと思っているが、前回のこともあるので継続している。
- ときどき、甘い物を食べたくなるのがつらい。
うつ病と診断された人には、じつは低血糖症であるケースが多い。食事の摂り方が乱れていて、圧倒的にたんばく質の摂取が少ない。たんばく質の代謝を促進するビタミンB群のサプリメントを摂ることによって改善可能です。血糖値の乱高下も、落ち着いてきました。
低コレステロールとうつの関係
脳の複雑な神経細胞のかたちを保つために重要なのが、コレステロールです。コレステロールは神経伝達をすばやくおこなうのにも使われています。それほど重要な働きをしているコレステロールが脳に少ないとしたら、いったいどんなことが起こってくるかは、容易に想像がつくでしょう。
コレステロールの値が低い人は、うつの症状を発現するケースが、じつに多いのが特徴です。コレステロールが脳内に少なくなると、セロトニンの機能が異常になる。セロトニンは心のバランスを保つために重要な脳内神経伝達物質ですが、バランスが崩れると、心はうつの症状を訴え、問題行動へとつながっていきます。
低コレステロールとうつの関係を示したデータは、数多くあります。アメリカで、就学児童や青年を中心に調査した結果では、コレステロール値が正常な群に対して、低コレステロールを示した群では、乱暴な行動が理由で停学や退学の処分を受けていた若者が3倍もあったそうです。その報告はこう締めくくっています。
「コレステロールの低下は、攻撃性克進のリスクファクターである」人間ドックを受けて低コレステロールだった人は、うつの割合が高いという報告もあります。出産後にうつ症状を訴えることを「産後うつ」というが、出産後コレステロール値が急激に下がることがうつを引き起こしているのではないかと考えられ、ここでも低コレステロールが関連していることがわかってきているのです。
重症の産後うつと不眠症が快眠ぐっすり酵素で改善。もう薬はいらない! – 快眠ぐっすり酵素「セロトアルファ」で睡眠薬が不要にhttps://108-blog.com/sleep/2016/03/post.html
さらには、高コレステロール血症と診断された人のなかで、投薬によるコレステロールの低下治療を受けた人と受けなかった人を比較したデータでは、投薬治療を受けていた人において自殺や事故死が多いという報告も少なくないのです。
うつの症状を訴える方の検査データにも、それははっきりとあらわれています。あきらかに低血糖症と診断する人のなかには、コレステロールの値が低い人が、少なくありません。
糖尿病と低血糖症は「表裏一体」の関係にあるのですが、同じことがコレステロールの値の判断にもいえるのではないかと考えています。とくに、若い世代に起こる問題行動や、中高年以上の人のうつも含めて、低血糖症とあわせて考えていかなければならない問題なのです。
次は、問題行動を起こしてきた21歳の女性の症例です。低血糖症を示していたのと、コレステロール値が低かったのが特徴的です。
低血糖症+低コレステロール
女性は「強迫性障害」と診断されていたのですが、彼女の症状は、まさに診断されたその通りのものでした。
特有のこだわりが強すぎる「強迫性障害」 | 健康マニア
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何度も手を洗い、ドアや受話器など人が手に触れるものには触れません。1日に何回もシャワーを浴びるため肌もガサガサという状態でした。明るい光の刺激がいやで部屋のカーテンもあけられず、人ごみが苦手で、電車にも乗れない。身体が異常にだるく、頭のなかかモヤモヤするため学校も休みがちになりました。お母さんの話によると、小さなころからテレビゲームばかりをしている子だったというのです。
ご飯が大好きで、学校からは肥満を指摘されていました。成績は優秀で、高い集中力を持続して勉強することができました。13歳のころから次第にイライラするようになり、ときにキレるようにりました。
強迫性障害の兆候が見え始めたのは16歳のころでした。生活は勉強のため夜中の2時3時まで起きている毎日でした。眠気を抑えるためのドリンクを飲み、コーヒーは学校へ持っていくほど多飲していました。
毎日イライラし、泣き叫んでいました。家族に当たり散らすといった行動が顕著になり、お母さんの言葉を借りれば、「人が変わってしまったようだ」というほどの暴れようでした。
学校の先生からカウンセラーを紹介されましたが、彼女の答えはNOでした。いよいよどうにもならないと感じたのか、彼女自身が病院へ行くことを選択しました。このとき18 歳。すでにひきこもり状態でした。19歳のとき、単身赴任中の父親と一緒に住み、予備校へ通うことを計画していましたが、実際に生活がはじまると、体重が20kgも増えてしまい、再び家に帰ってきました。
ひきこもりは相変わらずで、身体のだるさを訴える毎日でした。
彼女の場合、強迫性障害の症状もさることながら、キレる、うつ、ひきこもりといった症状にこそ問題がありました。検査データを見ると、低血糖症の数値が見てとれ、しかも著しくコレステロール値が低いのです。肥満ということもあり、コレステロール値を上げながらの体重コントロールは、それほど簡単ではなかったと思われます。しかし、彼女はよくがんばりました。絶対的な栄養素が不足していることにも、すぐ理解してくれました。
栄養療法を始めて半年後、あれほどいやがっていた人ごみにも抵抗が薄れてきていました。友人に誘われて外出するようになり、電車に乗って街にも出ることができるようになりました。驚くことに、泊まりがけで海水浴へも出かけました。あれほどひどかったさまざまな症状が軽快した証拠です。
気持ちも前向きになり、ひきこもりは卒業できました。彼女はその後、将来の夢を実現するためにアメリカの大学を受験し合格しました。いまはアメリカでのキャンパスライフを大いに楽しんでいることでしょう。
低血糖症になりやすい人、なりにくい人
再三になりますが、低血糖症になる人は、栄養摂取が乱れているのです。ダイエットをしてたんばく質をシャットアウトしていたり、インスタント食品やスナック菓子をより多く食べる人は、低血糖症になりやすいということです。
ただ、そうした食習慣以外にも、低血糖症になりやすい人はいます。腸の粘膜が弱い人です。
腸の粘膜は、通称「ゴッドハンド」といわれるほど、かなり選択性があり、調節能力が高いのです。食べ物を吸収するスピードを調整し、足りないと思うものは吸収率を上げ、足りているものは吸収率を下げるのです。つまり、身体のなかに取り入れるものを、腸の粘膜がすべてコントロールしているということです。
腸の粘膜にはそもそもそうした能力が備わっているのですが、アレルギーを持っているケースでは、腸の粘膜が弱いという傾向があります。たとえるなら、ザルの網の目のようにアレルゲン物質を体内へ、すんなりと取り込んでしまう状態です。
当然、栄養素も大きな分子のまま取り込まれることになります。つまり、吸収の速度が速くなり、急激な血糖値の上昇につながってしまうのです。
腸の粘膜に「カビ」がついてしまった場合にも、低血糖症を引き起こす確率は高くなります。「腸の粘膜に、カビ?!」
たいていの人は、身体のなかにカビが発生するなど、思いもよらないに違いないでしょう。ところが、カンジグ菌は人の消化器官内にも発生することで知られるカビで、通常、免疫力がしっかり働いていれば容易に取り除けるものなのですが、免疫力が弱くなっていたり、免疫力の弱い子どもの腸についてしまうと、なかなか取り除けません。悪いことに、このカビは甘い物が大好物です。そのため、精製された炭水化物や甘い物が体内に入ってくると、それを餌にして増殖し、ますます腸の粘膜を弱らせてしまうのです。栄養摂取の乱れがあれば、なおのこと、弱らせる傾向は大きくなる一方です。
腸の粘膜に原因が探れるケースでは、「無反応性低血糖症」や「乱高下型低血糖症」を起こしている割合が高く、比較的若年層に多いのも特徴です。ただ、腸の粘膜は細胞の入れ替わりが早いので、栄養療法でアプローチすることによって、比較的スムーズな改善できます。
また、血縁者に糖尿病の人がいるといった場合も、低血糖症になる確率は高くなります。先ほどお話ししたように、糖尿病と低血糖症は、血糖調整の異常という点では、表裏一体の関係です。
ストレスも原因のひとつ
副腎が疲労していることも、低血糖症を引き起こす要因のひとつとして見逃せません。副腎は腎臓のうえに、帽子のようにのっている臓器で、腎臓が2つあるように、副腎も2つあり、機能しています。
副腎はストレスを受けたときに、一番影響を受ける臓器です。副腎ではアドレナリン、ノルアドレナリンやコルチゾールといったホルモンがつくられています。これらのホルモンは、ストレスを受ける、あるいは受ける可能性を想定して放出されるホルモンです。ストレスを受けると、これらのホルモンは即座に放出され、足りなくなればつくり、また放出される。ストレスが繰り返されれば、副腎はホルモンをつくり続けなければなりません。
また、副腎から放出されるホルモンは当然、血糖値を上げるときにもかり出されます。「血糖値が下がりすぎているぞ」という指令がくだれば、それに対応しなければなりません。ところが、日々ストレスにさらされている副腎は、その指令にいつもいつも、全力で対応できるわけではありません。
- 疲れているのはわかるけれどがんばって!
- もうヘトヘトで無理だよ!
といった感じです。ストレスにさらされている人からは、そんな副腎の声が聞こえてきそうです。
血糖値を上げるホルモンはほかにもあるのですが、副腎が担っている役割はとくに大きいものです。日々受けるストレスによって副腎が疲弊していることもまた、低血糖症を引き起こす原因になるのです。
副腎が疲れている人の特徴は、朝~午前中のうつ症状や疲労感が強く、夕方から回復します。この症状もうつ病と診断されてしまう特徴といえるでしょう。
血糖調節の安定が、心を安定させるカギ
うつ、統合失調症、パニック障害など、精神症状に変調があらわれる病気でも、さまざまな病名があります。精神科のドアを叩けば、必ずなんらかの病名がつけられ、おこなわれる治療といえば、投薬です。
患者さんには必ず薬を見せてもらいますが、7〜8 種類飲んでいることが一般的です。なにかひとつ症状を訴えるたびに飲む薬が増えているのだろうとは、容易に想像がつきます。
「病まなくてもよかったのに病み、誤診され、誤った治療をされる」「潜行性で人を荒廃させる文明病」「単純で安全で効果的な手段を用いて治療が可能ではありますが、それに気づいていない」これは、アメリカの栄養学者パーポ・エイノーラ博士の言葉です。
彼は早くから低血糖症という概念を提唱し、研究を重ねてきました。彼の残した言葉は、まさに食べ物が原因でうつになっている人のことをさしているといっていいでしょう。
アメリカの精神科医であるマイケル・レッサー博士は「医療に従事し始めたときには、心理療法と薬を処方することが治療のすべてでした。心理療法は長時間かかるが、わずかの人にしか役立たないのです。薬は、症状を抑えるには時に効果があったが、ほとんどの問題の原因を治しはしない」
レッサー博士は、栄養療法の分野ではホッファー博士と並ぶシンボル的な存在だが、その博士はこうもいいました。「あらわれる精神症状は、さまざまな原因によって生じるが、それらの原因は低血糖症が関係している」
血糖調節を安定化することこそが、心を安定させる基本にあると、言っているのです。
国会でも取り上げられた低血糖症
身体を病めば医療機関がそれに対応し、症状に合わせた治療がおこなわれます。この当たり前の「病気」の範疇に、低血糖症は、いま現在、組み込まれてはいない。
そこに、少しだけ光が当たったのです。国会で「低血糖症」が取り上げられたのです。
1人の参議院議員が参議院議長に宛て「質問主意書」を提出し、総理大臣からの回答が届いたのです。その回答の一部は以下の通りです。
- 【質問】さまざまな治験例から統合失調症やうつ病、パニック障害などの精神疾患のなかには各種ホルモンの異常や代謝性疾患にともなう精神症状、栄養欠損による低血糖症等が含まれることが指摘されているが、精神疾患と低血糖症との関係について国の見解をあきらかにされたい。
- 【回答】低血糖症の治療には薬代がかさむため、医療面、経済面での支援の検討を望む声が
強いが、見解を示されたい。
「低血糖症そのものに対するブドウ糖の投与など一般的に必要な治療については、保険適
用の対象となっているところであり、低血糖症の治療について、あらたに医療費の助成等
の措置を講ずる必要はないものと考えている」
予想はしていたが、低血糖症に対する認識はまだまだ薄いというのが現状だ。
それでも、国会に取り上げられたということは画期的なことである。これを機に、低血糖症の認知がすすむことを願っている。 - 【質問】分子栄養学の知見では、5時間糖負荷検査の結果、精神疾患のなかには栄養欠損による低血糖症が見られるといわれているが、国の見解を示されたい。
- 【回答】低血糖症の治療には薬代がかさむため、医療面、経済面での支援の検討を望む声が強いが、見解を示されたい。「低血糖症そのものに対するブドウ糖の投与など一般的に必要な治療については、保険適用の対象となっているところであり、低血糖症の治療について、あらたに医療費の助成等の措置を講ずる必要はないものと考えている」
予想はどおり、低血糖症に対する認識はまだまだ薄いというのが現状です。それでも、国会に取り上げられたということは画期的なことだと思います。これを機に、低血糖症とうつ症状の違いがもっと理解されていくといいと思います。
3 thoughts on “うつの原因かもしれない「低血糖症」”