食事でもっと健康になる

1日は朝食に始まる

1日の食事は金・銀・銅のバランスで

古代ギリシアでは1日の食事は3回でしたが、ローマ時代には朝食は抜き、昼食と夕食の2食になりました。しかし、労働する者にとって朝食抜きは無理なため、昼食は朝食にくり上げされました。朝食は、その日の労働のために多く食べるものとなり、夕食は少し食べて早く寝るという習慣が板づきました。

英語のディナー(dinner) は、1日のうちで内容の最も豊かなもの、つまり正餐を意味し、現在は夕食を指します。しかし、dinnerの語源は、古期フランス語のd iner(ディネ)「断食を破る」で、元来は朝食を意味しました、
これは英語ではfast(断食)をbr eak(中断する)するとなり、breakffastが朝食を意味します。

「朝は王者のごとく、昼は富者のごとく、夕は乞食のごとく」とは、食事の内容や量を、金(朝食)、銀(昼食)、銅(夕食) のバランスで摂るのがよいとするヨーロッパの格言です。現在のイギリス人の朝食は、バターなどを塗ったトースト(パン) に、卵やハムやベーコン、ソーセージなどと、たっぷりのミルクティーの組み合わせです。

その日の労働のために朝食をしっかり食べるという中世の伝統が現在に受け継がれ、この伝統は開拓時代のアメリカにも伝えられ、ボリュームいっぱいの朝食が西部開拓の過酷な肉体労働を支えてくれました。日本では、奈良・平安時代には食事回数は1日2食が普通で、体を使わない貴族たちの朝の膳は、現在の昼食の時刻に摂られました。運動の激しい武士には、2食以外に間食用のコメが支給され、日の出とともに働き始める庶民にも間食が必要なことから、この間食が江戸時代に固定して昼食となり、働かない場合でも1日3食摂るという習慣が普及しました。

しかし、朝食は昼食に比べて重視され、朝食には必ず汁がつけられ、度重なる飢饉のときも、抜くのは昼食であったといわれます。原始の昔から、人問は日の出に起きて日没に休むという生活を続け、その生活に適したリズムは、神経やホルモンの働きによって巧みにコントロールされてきました。

日中は体温、血圧、血液成分などが高く、夜は低くなりますが、このリズムは脳内の体内時計によってコントロールされています。消化機能については、全身の細胞へ栄養素を速やかに供給するために日中は克進し、同時に体の成分の合成が高まり、明日へのエネルギー源が貯蔵されるようになっています。このような日内リズムの中で、血糖値(血液中のブドウ糖量を示す数値)は、早朝4四時ごろに最低に下がり、その後しだいに上がり始めて入時ごろにピークとなります。

これは、起床後の身体活動を円滑にするために、早朝に副腎皮質(ホルモンを分泌する副腎の外側部分) から出たホルモンが体内のたんばく質からブドウ糖をつくり始めるからです。起床後で朝食前という空腹状態のときでも、脳のエネルギー源である血糖値が高ければ、人間はすぐにも活動できます。食糧の安定供給の考えられなかった原始の時代には、狩猟採取などの生存活動のためにそれは欠かせない条件でした。

起床後の血糖値が高いのは一時的なことで、その後に何も食べなければ、それは下がってしまいます。持続的な活動を続けるためにはエネルギー源として何かを摂らなければなりません。

体内時計のリズムに合う

人間の生命活動は脳からの指令によって営まれ、脳が働くためのエネルギー源にはブドウ糖が用いられます。穀類やイモ類などの主成分であるでんぷんは消化酵素(消化を促進する化学物質)によって分解され、最終的に、ブドウ糖に変化して小腸で吸収されます。

血液中のブドウ糖は血糖といわれ、肝臓や筋肉に運ばれてグリコーゲンとなって蓄えられます。肝臓には50~60グラムほど、筋肉には120グラムほどが蓄えられ、過食するとそれ以上は脂肪となって貯蔵されます。

脳にはわずか0.1%に満たないブドウ糖しかありませんから、脳の活動のためには、常に他臓器からブドウ糖が供給されなければなりません。肝臓に貯蔵されたグリコーゲンがブドウ糖に分解され、血糖となって脳に供給されますが、もしもその供給が3分問止まれば、脳の神経細胞は変性して元に戻らなくなってしまいます。

他臓器に比べて、脳は低血糖と酸素欠乏に敏感に反応するからです。また、脳は体重のわずか2%しかないのに、エネルギー消費量は体全体の20% と、その量は筋肉の18% よりも大きいのです。1日に脳が消費するエネルギーは約500キロカロリーといわれ、ブドウ糖に換算すると、125グラムの量となります。

肝臓に蓄えられるブドウ糖の量には限界がありますから(50~60グラムくらい)、脳が必要とするブドウ糖は3回くらいに分けて摂らなければなりません。つまり、1日3食の習慣は体の生理にしたがって、自然に生まれた結果でもあるのです。

ですから朝食を抜いたり、あるいは朝食にでんぷん質食品を全く摂らなかったりすれば、脳のエネルギー代謝は上昇しませんから、眠くなったり、イライラしたり、集中力や気力が低下したりと、さまざまな不都合な症状が出現することとなります。

1日3食は、体内時計のリズムに合うために望ましい習慣です。朝食を抜いて昼食と夕食の2食とした場合、1日の熱量は足りても、カルシウムや鉄分などのミネラルやビタミンなどの微量成分が不足しがちです。朝食を抜くと基礎代謝量(生命活動の維持に最低限必要なエネルギー量)が低下し脂肪の燃焼効率が悪化、体脂肪は皮下や腹腔内(体内での内臓相互のすきま)に蓄積し、肥満や糖尿病などの原因となります。そうしたさまざまなことから、1日3食の習慣が望まれるのです。

こちらの「朝食は抜かない」の意味がわかります。

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