うつと亜鉛乏症の症状はとてもよく似ている点があります。チェックリストを使ってまず、亜鉛乏症でないことしっかりを確認しましょう。
うつ病でこんな症状があったら栄養欠損の可能性大
- 風邪をひきやすい
- 洗髪時髪の毛が抜ける
- 食欲不振になることが多い
- 肌が乾燥しやすい
- 傷の治りが悪い、跡が残りやすい
- 爪に白い斑点がある
- 味覚や嗅覚が鈍い
- 性欲が減退している
- ネックレスで皮膚炎が起きる
- 傷や虫刺されが化膿しやすい
男性に多い亜鉛不足
亜鉛欠乏は、鉄欠乏と併発しやすい特徴があります。亜鉛と鉄は同じような食材に含まれているからです。チェックリストで3つ以上当てはまる人は、亜鉛欠乏を疑ってみましょう。
検査ではわかりにくい亜鉛欠乏ですが、いくつか特異的な症状はあります。もっとも典型的なものが7の味覚障害です。重度になるとなにを食べても味がしないという状態になりますが、その前段階では濃い味を好むようになります。味覚障害が改善した母親の料理の味つけが、濃いめから薄味になったといった話もよくあります。
男性の場合、単身赴任で外食が中心になり、3ヶ月ほど経つとなにを食べても味がしなくなり、うつ症状が出てきたというケースもあります。
亜鉛が欠乏すると免疫が低下します。風邪にかかりやすくなるのはそのためです。また、爪に変化があらわれるのも特徴のひとつです。白い斑点ができるのですが、これは亜鉛欠乏を判定するのにかなり重要なポイントとなります。
皮膚のトラブルも、亜鉛欠乏で起こりやすい代表的な症状です。肌が荒れてカサカサしやすくなります。アトピーの人には亜鉛欠乏が多く見られるし、また、傷が治りにくく、虫に刺されたりすると跡がいつまでも残ったり、膿みやすくなったりします。
亜鉛は男性に欠乏しやすい栄養素で、意欲の低下や性欲の低下が起こるのも特徴としてあげられます。
低血糖症との関連も大事なポイントになります。亜鉛には、血糖値を下げるインスリンの分泌を調整する働きがあります。亜鉛が欠乏すると、調整がうまくできなくなり、インスリンの出が悪くなったり、出すぎたり、あるいは、出るタイミングが遅れたりします。そのため血糖値の調整に狂いが生じ、低血糖症になります。
また、血糖値の調整がうまくできないと、食欲のコントロールがつかなくなり、摂食障害につながります。摂食障害に悩む人の半数以上が亜鉛欠乏だったという報告もあります。
亜鉛が欠乏していたうつ、適応障害の男性
顕著な亜鉛欠乏が見られたのが、29歳の男性の症例です。うつ病と適応障害の診断をくだされていたのですが、疲れやすく、強い不安やイライラがある、パニック発作が起こる、といった症状を訴えました。気になっていたのは、薬の量です。
実は、こうしたケースは珍しくありません。精神科医による診断がそもそも的外れな場合、いくら薬を増やしたところで効果が上がらないのは当然です。
検査の結果、あきらかに亜鉛が不足していた。5時間糖負荷検査をおこなうと、30分後に大量のインスリンが分泌され、急激に血糖値が下がりました。亜鉛欠乏によるインスリンの調節障害が起きていたということです。
その後、また血糖値が上昇したのだが、これはホルモンの影響です。アドレナリン、ノルアドレナリンといった、さまざまなホルモンが作用することで、血糖値を引き上げたのです。
こんな状態では、先にあげた症状が出るのは当然です。そのままいけば、症状はますます悪化すると思われました。
亜鉛不足を改善することを中心に、必要な栄養素を摂ってもらうようにしました。
4ヶ月後の彼の自覚症状の変化は、次のようなものになりました。
- 気持ちの波がゆるやかになった。
- パニックに陥らない。
- 天気が悪い日も落ち着いていられる。
心配されていたお母さまからは、彼が自分で来院の予約を取ったのを見て、「本人にやる気が出てきたのを感じた」との報告をいただくことができました。
処方されていた薬を減らすことにも成功し、この時点で2種類だけになりました。
亜鉛を多く含む食材
亜鉛は、魚介類、肉類、海藻、野菜、豆類、種実類に多く含まれます。特にカキ(牡蠣/養殖/水煮)には100gあたり18.3mgと多く含まれるほか、うなぎの蒲焼100g(1串)には2.7mg、豚・肝臓生100gあたり6.9mgと魚介類や肉類に亜鉛が多く含まれています。